「百縁商店」の屋号に込めた想い
百縁商店の津田と申します。
こちらでは弊社の事業理念についてご紹介いたします。
弊社は創業から7年が経ち、これまで約170の企業様・卸店様と取引させていただきながら小売店経営を行い、また3,000名を超える経営者の相談にも乗ってきました。
その中でこんな悩みをよく聞いてきました。
- リピーターを獲得できないと困るからライバルより安く商品を販売したい
- 安くしないと自社商品の認知が広まらず困っている
- 相手が値下げするから自社も追随しないと販売数量を確保できない
一般的に「価格競争」と言われる問題です。
後述しますが弊社も創業初期に頭を悩ませていました。
価格を安くすれば確かに商品は売れるかもしれません。
しかし自社が発展・繁栄し、長期的に社会で活躍、貢献するためにその安売りを続けられますでしょうか。
弊社の結論は「NO」でした。
価格依存の経営から転換した経緯が現在の事業理念に繋がりましたので、それについてご紹介いたします。
「安売り」の光と影
商品を安売りすれば一過性に売り上げを作ることは簡単です。
しかし一方で薄利となりますのでよほど体力がある企業以外では長期に続けることはできません。
薄利が続けばお客さんが本来求めている商品・サービスの開発はできませんし、自社経営もどこかで無理する場面が多くなってきます。
物価が上がり続ける経済の中で給料も上げられませんから社内では常に誰かが我慢することになり。
社員の顔には疲れが見え、心配りもできず、ついには挨拶する元気すらなくなり、職場空気も澱みます。
安売りを続けることが本当の意味でお客様の役に立っているのでしょうか?
誰かに(どこかに)犠牲が集中し、無理することが本当の意味で持続的な小売り経営に繋がるのでしょうか?
弊社がこの問題と深く向き合うきっかけとなったのは、あるお客様からいただいたささいな一言でした。
商品は、作り手の想いを乗せる乗り物です。
「使う方の生活がもっと楽になったらいいなぁ・・」
「毎日食べる食品だからもっと体に優しい素材で作りたい」
「機能だけでなくデザインもこだわって日常でオシャレに使ってもらいたい」
弊社はいま、商品に込められた”想い”や”こだわり”を理解し、それをお客様へ届けることを最も大事にしております。
しかし創業当初はそうではありませんでした。
仕入れた商品にただ値付けし、他社より1円でも安く販売し、いかに効率よく販売できるかだけを考えていたのです。
ドライなビジネスに取り組み続けた結果、価格競争で大いに苦しみました。
どうしたら商売を永く続けられるだろう・・
長く悩みを抱えながら経営していたある日、お買い物いただいたお客様からふとこんな言葉をいただいたのです。
「この商品はまったく知らないけど、あなたが勧めるなら買いますよ。いくらですか?」
値段もあまり見ず買うと言われた言葉に当時大きな衝撃を受けたことをよく覚えています。
そのお客様はちょうど当店で健康枕をご購入いただいた方でした。
購入後の使い心地を聞いていると、ひょんなことから便秘の話になったのです。
何でも枕購入の経緯はふだんの寝つきが悪いからだそうで、その原因の一つは小学生の頃から30年も続く便秘体質なのだとか。
辛い時はかかりつけのお医者さんに処方された薬を飲むそうですが、長年改善せず困っているとのことでした。
その頃当店は栄養食品のメーカーさんと繋がりがあったのですが、そこでは身体に負担をかけない天然原料にこだわった整腸サプリメントを扱っていました。
開発者は熱心な方で、お客さんへ良い商品を届けたい!という一心だったのですが(初めて会ったとき立ち話で40分も商品について語られたことは驚きました)、
私もその方から熱を受けたのか、商品がどのように作られたか、開発者から聞いた想いをそのままお客様へご紹介したのです。
すると、
「見たことも聞いたことも無い会社の商品だけど、あなたが勧めるなら試してみるわ」とあっさりご購入。
え?知らない商品をそんな簡単に買うんだ・・とあっけにとられたことを覚えています。
また服用後には思いがけなかった感謝の言葉もいただきました。
「あのサプリのおかげでお腹がずいぶんと楽になったわ!便秘は不治の病と思って一生付き合うと覚悟していたのよ。
ところで他にもおすすめのサプリはあるかしら?効果が無くても気にしないで。まず試してみたいのよ。」
笑顔でそうおっしゃりながらいくつか商品をご購入いただいたのです。
たいして値段を確認することもなく箱で購入される姿には驚かされました。
お客さんは値段で商品を選ぶわけではないのか・・
私の中で凝り固まっていた常識が音を立てて崩れた瞬間でした。
この経験は一度ではなく、その後も似たことが続きました。
そんなことを繰り返すうちに、
「お客様は商品に何を求めて購入されるのだろう?」
「商品の”本当の良さ”とは何だろう?」
「自分が商品を買う立場なら、どんな基準で商品を選ぶだろう?」
と深く考えるきっかけとなったのです。
当時は小売店経営を始めたばかりで「安いほうがお客さんは嬉しいだろう」と思い、他社に負けじと価格競争することが日常でしたが、その結果はほとんどが期待しないものでした。
当時1日100個以上売れていた人気のお菓子を扱っていましたが、この商品は特に苦労したことを覚えています。
営業時間中は30分ごとパソコン画面でライバルの価格をチェックしていました。
というのもライバル会社も値段を強く意識しているのか、頻繁に1円単位で細かく値下げし最安値にしてくるのです!
相手が1円下げたらこちらも追いかけて価格を揃える。
また1円下げたらこちらも追いかける。
・・と競うように販売していました。
(驚くことに、たった1円下げて最安値にするだけで日々の販売数量が約20%も増えるのです)
しかしそんな作業は長く続けられません。
パソコン画面に張り付いていると、他の仕事がすべて止まります。
ライバルが頻繁に値段を下げるものですからこちらも疑心暗鬼となり。
最初は30分ごとにしていた価格チェックも次第に20分、10分とどんどん短くなり・・
ついにはパソコンの前から動けなくなってしまったのです。
「賞味期限があるのに思うように売れず不良在庫となってしまったらどうしよう・・」
「寝ているいまもライバルは値下げしているんじゃないだろうか・・」と不安に駆られ、悪夢にうなされるようになり。
ついには心の平静を保てなくなりました。
これは続けられない・・
毎月大きな売り上げとなる主力商品でしたが、断腸の思いで取扱中止を決断したことをよく覚えています。
「本当の商売とは何だろう?」
価格競争にすっかり疲れた私は一度販売の現場から離れ、商売の本質と向き合いました。
何十年も経営を続けている大先輩の話を聞きに行ったり、異業種交流会で小売以外の業界について聞いてみたり。
わずかでも会えると言ってくださる経営者がいれば全国飛び回り、改善のヒントをつかもうと試みる日々でした。
先人の知恵を求めて書物を買い求め、経営の神様と呼ばれた松下幸之助や著名人の絶版となった古書すら探して読み漁り。
商売の起源について深く調べるとある人物に光明を得ることとなったのです。
江戸時代の商人で石門心学の開祖と言われた石田梅岩(いしだばいがん)でした。
梅岩は都鄙問答で商売についてこう説いています。
「良い商品を作ろうと思ってくれる人、良い商品を買いたいと思ってくれる人
売り手も買い手もその心の本質は変わらない」
「お互いの心を知ることが最も大事なことであり、商売人の最上の仕事は両者の架け橋となることである」
まるで雷に打たれたような感覚でした。
探し求めていた理想がここにあったからです。
買い手は商品やサービスを通じて売り手の心を感じ、気持ちを感じ、「買ってよかった!」「いい買い物をした!」と思っていただくとその心が”お客様の声”として売り手へ帰っていく。
売り手はいただいた声をもとにさらなる改善・改良を試み、次の新しい商品・サービスを開発する。
商売人はその間に立ち、売り手と買い手の間の循環を回してご縁を深めることで、みんなの心が温かくなる世界を作っていく。
明るい未来を作ることこそ商売人の仕事であり、大事にするべきことか、と気づかされました。
梅岩の教えを思うと、かつて値段も見ず商品を買ってくださったあの便秘に悩んでいたお客様の行動もスッと腑に落ちたのです。
あのお客様は商品を買ってくださったのではなく、
背景にあった作り手の想いに希望を見出し、期待したから買ってくださったのか、と。
現場に戻った私は梅岩の教えを実践することで、無理のない商売が少しずつできるようになっていきました。
以前のように毎日パソコン画面とにらめっこし、他社と競うように値下げせずともお客様のほうから自発的に「欲しい」と自社商品を選んでいただけるようになったのです。
時には他社より高くても「あなたが売るなら」と購入いただく機会も増えました。
そのような商売ができるようになると社内にも良い風が吹き始めます。
良い想いの商品を扱っていると想いが移るのでしょうか、働いてくれるスタッフの心も明るくなり、私自身も心に余裕ができたのか以前のように血眼になって値下げすることもなくなり、自然な笑顔が増えたように感じました。
こだわりの商品には必ずその背景に熱い想いがあります。
弊社は売り手の熱い想いを買い手に届け、”百”の良い”ご縁”を結ぶお手伝いがしたい。
そしてできれば、私たちがいなくなったあとの200年先のお客様にも今と変わらず喜んでいただけるような長く愛される商品を扱いたい。
そういう理念で「百縁商店」の屋号のもと活動しております。
ご賛同いただける企業様・卸店様がいらっしゃいましたらぜひ一緒に活動させていただけたら嬉しく存じます。
百縁商店 店主
津田俊之